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〜 Liar-soft 前編 〜

さてさて、今回のブランド訪問はLiar-softさんにお邪魔してきましたよ。

Liar-softといえば『ぶるまー2000』のようなバカゲーや、新選組を扱った『行殺新選組』、レズ物の『サフィズムの舷窓』など、様々なジャンルで一味違ったゲームを出しているブランドだな。

そういった作品にハマってしまったコアなファンが多いんですけど、実は業界内にもファンが多いことで有名なブランドさんなんですよね。

うむ、その辺りの話や、10月1日に発売される新作『ANGEL BULLET 〜エンジェルバレット〜』の話も色々と聞いてきたので要チェックだYO!
お話を訊いたスタッフ
Liar-soft 山原久稲 氏
―― Liar-softの成り立ちについて教えてください
山原氏(以下、山):もともと何も縁が無いところから集ったわけではなくて、メンバーは遊演体※1 という会社で、郵便を使ったコミュニケーションゲーム(メールゲーム) を開発していました。その遊演体がゲーム部門を縮小することになったとき、元ライターの人間が声をかけて作ったのが今のLiar-softです。
※1 PBM ( Play By Mail = 郵便を使ったゲームの略 )を商業運営していた
会社。オールドゲーマーには懐かしい「蓬莱学園」などが有名。


―― なぜコンシューマではなくあえてPCゲーム開発を?
山:基本的にはゲームが作れれば良かったので、今でも別にPCゲームにこだわりがあるわけではないです。いってみれば資本力が少なくても良く、ゼロから開発してもノウハウが蓄えやすいというところ。それからスタッフにもユーザーがいたので、ある程度ユーザーとしての目から見て業界に存在していないものを作れば売れるのではないかというイメージが湧いたところでしょうか。あとは表現としての規制がコンシューマに比べて小さいので、自分達の出したい表現がしやすいということもありますね。

―― Liar-softの名前の由来について教えてください
山:「嘘つき」とか「だます」という意味なんですけれど、人を食った名前ですよね(笑)。オフィシャルサイトや雑誌などの最初の告知で、キャラクターやストーリーを見て持つイメージってありますよね。最近はそのイメージそのままのゲームが発売され、それをユーザーがプレイして終わり、というゲームがあまりにも多いと思うんです。けれども、僕らがゲームに必要だと思うことは娯楽性と意外性、ユーザーが想像したことをいかに裏切るかということにつきると思うんです。そういった意味でユーザーのイメージを上手くミスリードさせて発売して、プレイしたら「おっ、想像していたのとぜんぜん違う…だまされた!でもおもしろい!!」といった驚きがあって、常にユーザを欺きつづけますよーっ、ていう意思表示としてのブランド名です。

Liar-softの中はこんなんだ!
お菓子の箱やエロゲ雑誌と一緒に、神話や遺跡の本といった資料の山を発見。

グラフィッカーさんも集中して黙々と作業中でした。お騒がせしました。
―― たしかにホームページを見ただけではどんな作品かよく判らないことがありますね
山:まず、一貫した広報方針としてホントのことは言わない、誤解されそうな部分的な真実を抜き出す、というのがありまして(笑)。正統派の物を作って正攻法の広報展開をしたら、うちよりお金のあるメーカーには一生勝てないですから、上に追いつくためも正攻法は取っていないですね。まぁ、作品そのものも売れ筋から離れたものを作っているというのもありますので、売れているゲームを上から順にやっていくようなユーザーが買っても良くわからないまま終わってしまうとは思います。その時点である程度ユーザーを選んでしまうので、そのぶん経営が辛いんですが。

――作品のレビューや評価では『大多数の人はつまらないと思うが俺は好き』などとよく言われていますが
「これは売れない、けど俺は好き」というのは一番の評価ですね。うちのゲームを気に入って他の人に勧めようと思ったとき、他社のゲームだとこのストーリーがいいとか、このキャラがいいよって言えるのですが、うちのゲームの場合は「なんだか良くわからないけどツボにはまった」っていう説明しかできないのだと思います。だからレビューサイト等でもそういった書き方をされることが多いようです。この前の飲み会※2でも「僕は良くわからないからLiarさんのゲームを買っているんですよ」っていわれちゃいました、それでへこむんですけど(笑)
※2 コミックマーケット66の初日が終わった後、すたじおみりすと合同で行われたユーザー、メーカー、雑誌社三つ巴の宴会イベント。3回目となる今回はユーザー約80人、業界人約20人が参加してかなり盛り上がったらしい。

―― ファンクラブも盛り上がっているようですね
山:ファンクラブは、ユーザーのつなぎとめと、情報の告知を効率よくするためだけにやっているわけではなく、正規に告知するまでも無いネタを地下で吐き出すような環境になっています。だから業界の中でもコアなLiar-softのユーザー、その中でも更にコアな部分、"鍋の底の煮詰まり"みたいな人が集っているように思います。結局、その人たちが読んで面白いと思うものが僕らが一番吐き出したいものなので、"濃さ"という意味では業界でも一番じゃないかと思います。会員はファンクラブ創立当時はメールゲーム時代の人も多かったんですが、5年もたつとかなり変わってきていますね。今は僕たちが昔何をやっていたか知っている人のほうが少ないんじゃないかな。新しく入ってきた人は『行殺新選組』『サフィズムの舷窓』『腐り姫』あたりからが多いですね。その三作品が今までとは違うユーザーを獲得する契機になったんじゃないかと思います。まあその三作品ともお店の人にはこれはダメだ、売れないっていわれてたんですけど。

――作品は声優や音楽の評判もいいですよね、また毎回原画家はどうやって選んでいるんでしょう?
山:声優の評判がいいのは、まずこちらで全部声優を選んでいるというとこと、あとは最初にキャラを決めてからお願いする声優を決め打ちしているので、キャラと声優のイメージが離れないことが大きいと思っています。
音楽を作って頂いているノーブランドサウンズさんは遊演体時代の知り合いなんです。最初にゲームを作るとき、音楽のイメージを伝えやすい人にしようということでお願いしました。デビュー作の『ちょ〜イタ』で評判が良かったのでそのままお願いしています。イメージ通りに作っていただけるのでとても良いですね。
原画は全て外注に出しているんですが、まず企画とシナリオありきで、それにあわせて描けそうな人を探しています。ですから原画家の絵にあわせて企画を考えることは無いです。

Liar-soft 作品一覧

1999年
ちょ〜イタ 〜素晴らしき超能力人生〜
交通事故が原因でテレパシーと透視能力を身につけた主人公が、超能力で可愛い彼女に色々なイタズラをする超能力アドベンチャー。

2000年
行殺新選組
幕末京都の新選組を題材にした恋愛アドベンチャーゲーム。オープニングテーマのバカっぷりはあまりにも有名。お店に「時代物は売れない」と言われたらしい。
ぶるまー2000
ブルマーに始まりブルマーに終わるケツゲー。「BB(ビッグブルマー)団」や「十ケツ集」などのアニパロに加え、実名出まくりのギャグや数々のネタで話題に。

2001年
サフィズムの舷窓
連続レイプ犯の疑いをかけられたレズの主人公が、学園船を舞台に捜査する耽美推理アドベンチャー。またお店に「レズものは売れない」と言われたらしい。
ラブ・ネゴシエイター
恋愛交渉人のあだ名を持つ主人公を中心とした不条理ネゴベンチャー。開発発当時、時事ものとして飛行機テロネタを入れようとしたがボツになったとか。

2002年
腐り姫
インモラル・ホラーアドベンチャー。恐ろしく手がかかった立ち絵、ヒント機能「盲点」のギャグと本編のシリアスのギャップといったギミックが楽しい。あと婦警さんも。
PINK PANZER 〜ピンクの象
新兵器実験部隊の小隊長を命じられた主人公が、素人同然の女性兵士を教育していくSLG。またまたお店に「ミリタリーものは売れない」と言われたらしい。
行殺新選組 ふれっしゅ
キャラも増えてリニューアルされた『行殺新選組』。バカゲーだと思われがちだが、実はシナリオは結構シリアスな展開もある。

2003年
CANNON BALL
 〜ねこねこマシン猛レース!〜

緻密に構成された世界観と魅力的なキャラクターでかなりの反響があったが、初回版のバグでも話題に。お店に「SFものは〜」といわれたかどうかは判らない。
Little Little Election
突然、当選奨学金3億円が与えられることになった会長選挙をめぐって巻き起こるドタバタを描いたちびっ子会長選挙アドベンチャー。奨学生好きな人にオススメ。
ライアー大戦じゃんまげどん
主人公は現実世界に戻るため歴代のライアー作品のヒロイン達と麻雀で対戦することに…でも麻雀をスキップできたりもする。ライアーソフトのファンディスク的作品。

2004年
Forest -フォレスト-
登場人物達は新宿からの追放を免れるため、突如現れる「森」から出される「リドル」を解き明かしていく。レビューサイトなどで「人を選ぶ」と話題になった。
サフィズムの舷窓 〜an epic〜
Web配信シナリオを追加してリニューアル。旧作は「マリ見て」ブームのおかげで話題になった時にはロットアップしていたため一時期中古で高値を呼んだ。
ANGEL BULLET 〜エンジェルバレット〜
Lia-softr期待の新作。マゾ主人公がえっちなことをおねがいしていただく土下座システムを搭載。詳しくはインタビュー後編にて。

――企画はどうやって立てていくのでしょうか?
山: 新作の『ANGEL BULLET』もそうですが、企画は最初にまず1つのコンセプトを決めてスタートし、全員で後付けして色々作っていきます。その時に世界観をしっかりと作りこみます。特にうちは現代日本が舞台ではないゲームを結構作るので、ある程度バックボーンをしっかり作っておかないとゲーム内で気づかないうちに矛盾が出てきてしまうんです。だから設定とプロットにシナリオライターと開発期間の八割くらいを使っています。

―― 世界観を決めてから文章にするというのはメールゲームの経験からなのでしょうか?
山: シナリオを書いている人間は小説家ではなくてゲームライターなので、ゲームの世界や設定をはっきり決めてからでないとネタがでてこないというのはあると思います。プロの小説家のようにプロットの枝から幹を書き出せる人種ではないですね。プロットさえ考えれば文章を書くのは作業になるので、ネタのからくりの部分を考えるのがキモです。
 ただ、あくまでもゲームは、絵や声がのって字幕になって始めて文章として完成するものだから、小説として完成させる意味は無いし、むしろ他の要素を邪魔してしまう意味で逆効果だと思います。文章はツナギのひとつであって、しっかりと書き込むよりも世界観をしっかり作った上で、そこに音楽や絵を調和させていくほうがゲームとしてのトータルの完成度は上がると考えています。さっきの話ですが、そういう作り方をするから、音楽や声がゲームにマッチして、クオリティ・評価が上がるという相乗効果もありますし。

―― もとメールゲームのライターで今小説を書いている方も多いですよね
山: そうですね、メールゲームのライターは小説を書く格好の練習になると思います。逆に小説家がメールゲームのライターができるかというとそうでもないんですが…。小説は自己完結させられますが、メールゲームでは入り口も出口も同じ大きさに広げておかなければならないので、手法としては難しいと思います。ゲーム中ユーザーの暴走をうまく受け止める才覚も必要で、文章力やプロット力は当然必要ですが、そのほかにも即興性が必要になってきます。小説でもうひとネタ欲しい時に、パッと思いつく技能を養えると思いますね。
 そういった技能がゲームを作る上でも有利ですし、ゲームで選択肢を設けるときなどで違いが出てきます。小説家寄りのシナリオライターは、3択で1個が正解でその他は潰れてしまう、といった意味の無い選択肢を作ったりするんですが、ゲームライターは、この3択で何かフラグを立てて、次の3択に派生させる発想を即興で思いつくことができるんです。ただフロー管理が大変なので、それがバグの温床になっている面もあるんですが…。

――たしかに実際に意味の有る選択肢はゲーム中で2〜3箇所というゲームは最近多いですよね
山: ゲームというのは選択肢を選んでもらうことで完成するものなので、ユーザーが考えて選んだ選択肢に何かしら意味をもたせるべきだと思っています。朝ご飯に和食か洋食を選ぶ選択肢があって、和食を選ぶと「日本人なら和食だよなぁ…」で済ませてしまうようなゲーム性の水増しにはなるべくしたくないですね。作り手もユーザーもそういうことに慣れてしまうのは問題だと思います。そういったことを色々と考えて作ってはいるんですが、うちは零細なので与える影響がとても小さいんです。ただ、幸運にもユーザーに業界の方が多いので、他社のライターがゲームの選択肢の作り方などを見て自社のゲームにフィードバックしてくれることもあります。そのゲームが面白ければ逆にうちにもフィードバックされるところがあるし、それに結構な数が業界内で売れていると思うので、両方の意味でありがたいですね(笑)

―― そういう意味でも業界ウケがいいメーカーとよく言われますが
山: 業界ウケ"だけ"がいい、ともいいますが(笑)。Liarのゲームにはなぜこんな無駄な演出を作るのか、というくらい、今のエロゲーのフォーマットから見て無駄が非常に多いと思うんです。例えば『腐り姫』の背景に置く立ち絵は全部一点もので立ち絵だけで1000枚くらいあるんです。そんな手法は費用対効果から考えて普通はありえないですよね。効率を考えたらやらないことを毎回少しずつでもいいので、あえてやっていくことで、業界の人から見て「あいつら馬鹿だなぁ」と思ってもらっているのかもしれないと思います。


Liar-soft
オフィシャルサイト

(C) Liar-soft

2004/08/31 公開
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